2014年の11月に、ルトくんは商工会連合会から採用候補者名簿に登録されたとの連絡を受けました。
長いこと就職活動をやっていて、初めて受けた仮採用の通知に驚きながらも「良かった。ちゃんと採用してもいいと言ってくれる所はあるんだ」と一安心していました。
その通知を受け取ってからもう一度、募集要項を見直しました。
そこには「正式に採用されてから半年の試用期間の間に、日商3級又は全商2級以上を取得していただきます」と記されていました。
「それなら時間的に余裕がある今のうちに取得しておこう!」
と思い立ち、翌年の2月に行われる簿記検定に向けて勉強を始めることになりました。
私が受けることに決めたのは、日商簿記検定3級です。
最も有名な簿記の資格であること、
受験日が近いこと、
頑張れば独学で取得できること、
などが日商簿記検定を選んだ理由になります。
両親からは「大原やTACの学校に通った方がいいんじゃないか」「いきなり独学で勉強して本当に取れるのか」と心配する声が上がりましたが、日商簿記検定1級を受けるならまだしも、高校生でも普通に受験して取得している資格なので、資格学校に高額の学費を払うのはバカバカしいと思い、独学で受験することにしました。
使ったテキストは簿記の教室メイプルが出しているテキスト、問題集、過去問題集、直前対策の本でした。
最初にやったのは、仕訳です。
簿記の基本となるものだと知り、テキストを見ながら何度も繰り返しました。
仕訳を一通りマスターしたと思いましたら、現金出納帳や小口現金出納帳、当座預金出納帳、減価償却、租税公課などを学んでいきました。
正直、ここまでは専門用語があるものの、一度理解してしまえばそう難しいものではありませんでした。
私が手こずったのは、むしろここからです。
難関は、日商簿記3級の大詰めともいえる試算帳、貸借対照表、損益計算書でした。
専門用語が並ぶ文章題。
数字を転載する場所を間違えていないはずなのに、明らかに違う合計数。
そして、どこに転載したらいいか分からなくなる複雑さ。
これだけのために1日を費やすこともよくありました。
途中、本当に分からなくなって泣きそうになったこともあります。
どうやったらこれをクリアできるのか分からず、私はただひたすらに問題をやりながらネットで攻略法を探ったり、過去の合格体験談を読んだりしました。
合格体験談には「ある日突然、できなかった問題が水が流れるように分かるようになったりするから諦めずに問題に取り組め」とありました。
本当にそんなことがあるのかと思いながら問題を解いていたある日、ついにその時が訪れました。
何の前触れもなく、ある日突然に、問題が分かるようになったのです。
あんなに悩んでいた試算帳、貸借対照表、損益計算書のどこに転記していったらいいのかが、一つずつ理解できるようになっていきました。
この変化に最も驚いたのが、私自身でした。
さらに驚いたのは、計算の速度が上がったことです。
基本的に日商簿記3級で扱う計算は、足し算と引き算ですが、私は2ケタ以上になりますと計算するのに時間が掛かってしまうほど数学が大の苦手でした。
しかしこの頃から、以前と比べて明らかに計算する速度が上がりました。
小中学生の頃、どうやってもできなかったのは何だったのか。
ケタが大きすぎる計算は電卓を使いましたが、2ケタくらいなら数秒以内で計算することが当たり前になって行きました。
そして迎えた本番の日。
受験会場は、地元の商工会議所の会議室でした。
受験票を持った私は、試験が始まる直前まで仕訳の勉強を繰り返していました。
不安は当然ありましたが、
「ここまでやってきたんだから、きっと大丈夫。後は自分を信じよう」
と決めました。
時間になると、机の上に置けるのは鉛筆、シャーペン、消しゴム、時計、電卓だけになりました。
他のものは全て鞄にしまい、イスの下に置きます。
そして試験が始まりました。
最初に仕訳問題、次に現金出納帳とここまでは難なくこなせました。
しかし問題は、第4問でした。
これまでにほとんど出たことが無いような形式の問題が出ました。
過去問でも、過去10年分の問題の中で2~3問、あるか無いかのような問題形式でした。
この瞬間、
「あ、これはもう捨てよう」
と私は思いました。
しかし、白紙で出すのは嫌だったので、とりあえず取り掛かり、私は「これはここでいいんじゃないかな?」と思いながら空欄を埋めていきました。
そして第4問が終わってから、第5問と第3問に取り掛かり、こちらは時間こそ掛かりましたが自信を持てる回答ができました。
試験から一定時間が経過して途中退席が可能となっても、私は何度か見直しをしながら最後まで粘りました。
そして試験終了時間が来ますと、答案用紙を提出し、荷物をまとめて駅に向かいました。
あぁ、第4門はもうダメだな。
終わった直後に思ったことはこれでした。
帰る途中に、スマートフォンで私が勉強で使ったテキストを書いている簿記学校の先生が解答速報を出していましたので、それを小さな画面で見ました。
第1問、第3問、第5問は自信がありましたので、解答速報を見て「よしよし」と間違いなく得点したことを確認しました。
第2問も大きな問題は無さそうでした。
そして、自信のない第4問の解答速報……。
一応、確認しておこうか。
そう思って解答速報を見た私は、目を見張りました。
「あれ? これなんか同じような答えを入れた気がする」
解答速報を見て私が思ったことは、それでした。
いや本当に、解答速報と私が記入した回答がそっくりなんです!
簿記学校の先生が間違えることは稀有な事例なので、今回に限ってそんなことはないだろうと私も思いました。
これで「もしかしたら、なんとかなったかも!」という気持ちを抱きました。
そしてしばらくしてから、日本商工会議所から一通の手紙が届きました。
合否の結果通知書でして、結果はなんと合格!
思わずガッツポーズしました。
合否通知書には、もう1枚別の紙が入っていました。
それは今回の簿記検定で獲得した得点の通知書でした。
「まぁ、合格したってことは100点満点中70点以上は取れただろうな」
と思いながら、得点の通知書も開きました。
そして、私は文字通り目を見開くことになりました。
なんと100点満点で合格していたのです!!
正直、最初は別の人のものを間違って送ってきたのではないかと思いました。
商業高校卒でもなく、これまでに簿記の勉強をしたこともなく、たった2~3ヶ月しか勉強していなかった私が、いきなり満点を取れるわけがないと信じて疑わなかったためです。
しかし、書かれていた受験番号に間違いはありませんでした。
そこで私は「満点を取って合格した」ことを確信しました。
翌日、私は合格通知書を持って受験した商工会議所に向かいました。
事務室の受付で要件を告げ、合格通知書を提出してしばらくしますと、合格証明書になって返ってきました。
こうして私は、晴れて日商簿記検定3級に合格することができました。
簿記3級は、思ったよりも簡単に取得できました。
合格するために必要なことは次の2つ!
・仕訳、試算表、貸借対照表、損益計算書を理解すること。
・繰り返し問題を解いて、問題に慣れること。
以上の2つができれば、必ず合格への道は開かれます。
「誰でも取れる」なんて言葉は信用してはいけません!
合格に向かって努力を続けられた人だけが、取得できます!
まずは仕訳から、取り組んでみてください。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!