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【骨髄提供】手術の日【第6段階】

入院してから2日目。

いよいよ、手術をする日がやって参りました。

人生で手術を受けるのは、これで2回目になります。

一度は、右手中指を剥離骨折したときの手術です。

そして今度は、骨髄提供のために骨髄液を取り出すための手術です。

医療ドラマでは、度々手術をする場面が映し出されていますが、実際の医療の現場はどうなのか。

今回は実際に手術を受けた時のことを、自分の気持ちと共に紹介していきます。

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起床後の気持ち

目を覚ました時、意外にも心の中は晴れ渡っていました。

もっと「手術怖い」「全身麻酔怖い」と思うものだったり、恐怖に震えたりするものだと思っていましたが、全然そんなことはありません。

少なからずリスクのある手術を全身麻酔下で受けるというのに、気持ちは全くといっていいほど動揺していません。

まるで悟りを開いたように、心の中は静かでした。

私はかつて本で読んだ、出撃前に特攻隊員が遺した遺書の内容や、数々の言葉を思い出していました。

特攻隊員として死ぬことが決まった後、動揺する時期を乗り越えた特攻隊員の心の中は、澄み渡っていたそうです。その証拠に、彼らが遺していった遺書や言葉の多くは、明鏡止水なものがほとんどです。

特攻隊員と違って死ぬわけではありません。(もちろん、万一に死亡のリスクはあります)

しかし「他者の命を救うために、自らの身体を犠牲にする」という点で、どこか近しい気持ちが生まれていたのかもしれません。

特攻隊員ほど崇高な存在ではありませんが、少し彼らに近づけたのかもしれないと思っております。

(特攻隊員に興味を持たれた方は、是非とも知覧特攻平和会館へ足を運んでみてください)

手術まで

そんな晴れ渡った気分の中、私は入浴を済ませておき、10時から手術に向けて点滴が始まりました。

点滴の針が左手に刺し込まれ、医療ドラマなどで見るような点滴の袋が繋がれます。

点滴を受けている最中、眠くなってきましたので看護師さんに「もしかしてこの点滴には、麻酔の成分が入っているのですか?」と質問しました。

看護師さん「これには麻酔の成分は入っていないですよ。これの中身はポカリスエットのようなものです。きっと、昨夜あまり眠れなかったから、眠気が来ているせいだと思いますよ」

ということだったので、点滴のせいで眠くなってきたわけではありませんでした!

しかし、中身がポカリスエットのようなものだと聞いたためか、点滴の袋が逆さまに吊り下げられたポカリスエットのボトルに見えてきました。

ポカリスエットを点滴で自分の身体に流し込んでいると考えると、少しだけ可笑しくて笑いそうになってしまいました。

そんなことを考えながら、持ち込んだ「万葉集」を読みつつ、手術室へ向かう時間を待ちます。

午前中には担当医の先生も来まして、手術について話してくれました。

先生「だいたい3時間くらいかかるから、13時から始まって終わるのは16時頃。午後4時頃だからね」

ルト「分かりましたー」

手術はそれくらいの時間がかかるものなんだなぁ。手術をする先生は大変だなぁ。

そんなことを思ったものでした。

とてもあと2時間ほどで、手術を受けるとは思えませんでした。

手術室へ

万葉集を読んでいますと、手術着を持った看護師さんがやってきました。

看護師さん「これから、手術着に着替えてください」

その指示で、私は手術着に着替えることになります。

しかし、ここで問題が発生しました!

左腕に点滴が繋がれているため、パジャマが脱げなかったのです!!

どうしようかと思いましたが、最終的に「左袖を点滴の袋が通ることで脱げる」という結論にたどり着き、無事に着替えることができました。

ちなみに手術着になりますと、下も脱がないといけないため、手術着の下はパンツ1枚というかなり寒い格好になってしまいます。

それ以外に、足を圧迫する靴下も履きました。

これはエコノミークラス症候群を防止するためのものだそうでして、つけないと足の血管に血栓ができてしまうそうなので、必ず着用します。

エコノミークラス症候群になって血栓ができてしまうと、冗談抜きで命の危機です。

そして寒い廊下を看護師さんに付き添われて歩きながら、歩いて手術室へ入っていきます。

もちろん、点滴も一緒です。

ちなみに途中で、あの患者が頭につける帽子のようなものを被りました。

最新鋭の医療機器と、専門医をはじめとした医療スタッフが待ち構える、手術室。

天井には無影灯があり、手術台を見下ろしていました。

まるでドクターXやコードブルーの世界そのものです!!

今にも米倉涼子演じる大門未知子が現れて「私、失敗しないので!」と言いそうでした。

麻酔注入

すぐに手術台に行くのかと思いましたが、そうではありませんでした。

隣に置かれた医療用のベッドに横になるように言われて、その通りに横になりました。

そこで酸素マスクをつけられ、麻酔は点滴から身体の中に入っていき、そして効いてくると説明を受けます。

麻酔ガスを口と鼻から呼吸で入れられると思っていたので、これはちょっと意外でした。

点滴の袋から、麻酔薬が入った袋へと繋ぎ変えられます。

そして1分くらいしましたら、少しずつ意識がぼんやりとして来ました。

ルト「なんだか意識がボンヤリします~」

麻酔科の先生「ルトさん、麻酔が効いてきた証拠ですよ~」

そんなやり取りをしたかと思いますと、意識を完全に失って目の前が真っ暗になってしまいました。

これから手術が始ま――。

私が覚えているのは、そこまででした。

手術中に目が覚めたりすることはなく、5分くらいぼんやりと暗闇を見つめているような時間が、続いていたような気がします。

目が覚めたら

「終わりましたよー」

誰かの声で目を開けた時、まだ意識はボンヤリとしていました。

「呼吸できますかー? 深呼吸してみてくださいねー」

そう言われて、私は深呼吸を何度かしてみました。

ボンヤリとした意識の中、呼吸器が外されたらしく、再び酸素マスクがつけられました。

心配していた吐き気などはありません。

壁にかかっている時計をチラッと見ましたら、時間は2時55分を指し示していました。

ビックリです!!

3時間はかかると思っていた手術が、2時間弱で終わってしまいました!!

あまりにも早かったので「えっ、もう採取終わったの!? 本当に!?」とボンヤリする意識の中で疑問に思っていました。

とてもそんなに時間が経っていたとも思えなかったので、軽く浦島太郎状態でした。

そしてベッドに寝かされたまま、病室へと戻ります。

さすがにまだ自力で歩行することができないので、このようになりました。

手術室にいる先生や医療スタッフの皆さんに「ありがとうございました」とお礼を告げて、手術室をベッドで出ます。

その後「身内の者なんですが」という聞き覚えのある声が。

紛れもなく、私の母親でした!

回復して少しはっきりしてきた意識の中、私は右手の親指をそっと立てました。

なんとか、生きて帰ってこれました。

病室にて

病室に戻ってきました時、意識はほぼほぼ元通りになっていました。

しかし、まだ麻酔は効いているらしく、ふらつくこともあるとのことでした。

病室に戻ってきても、酸素マスクはつけられたままでしたが、点滴は取れました。

しかし、また必要になるかもしれないからと針と一部のチューブは残されます。

さらに心電図や脈拍を測定するための機械が取り付けられていて、いかにも病人といったような感じになっていました。

これでは、トイレに行くことさえままなりません。

後で自分でも見るためにと、母親に頼んで写真を何枚か撮ってもらいました。

腰のあたりに3か所ほど、傷跡がありました。

この傷跡こそ、注射針を刺し込んで骨髄液を抜き取った証でもあります。

ちなみに外見からは分かりませんが、中にある腰の骨にはもっとたくさんの穴が開いていますので、手術で腰の骨を取り出したらマシンガンで撃たれたようにハチの巣になっているはずです。

いや、取り出したりしませんが。

そして先生が来て処置が始まり、傷跡にあてがわれていたガーゼが外され、新しいものに交換されました。

傷口に消毒薬を塗られたとき、けっこうしみました。

叫ぶほどではありませんでしたが、少し痛かったです。

処置のときに、酸素マスクや医療機器も外されました。

これでやっと、トイレにも自由に行けるようになります。嬉しい!!

処置が終わった後、コーディネーターさんもお見舞いに来てくれました。

体調などに変化がなく、元気なことを伝えますと、安心した様子でした。

「コーディネーターさんも大変な仕事だよなぁ……」

そう思った私は、コンビニで買ってきたお菓子を1つ、コーディネーターさんに手渡しました。

そして母親と少し話してから、病室を後にしていきました。

ちなみに母親から「何か差し入れでほしいものはないか?」と聞かれたので「コンビニで売っているものでいいから、お寿司が食べたい」と伝えました。

母親は面会時間終了ギリギリまでいる予定だったらしく、買いに行ってくれました。

ありがたいことです。

しかしなんと、コンビニに無かったために、わざわざ松坂屋の地下で高そうなお寿司を買ってきてくれました。

驚きましたが、ありがたく受け取って食べました。

とても美味しいお寿司でした。

ちなみに、こちらが実際に食べたお寿司です。

 

食事制限を受けているわけではなかったことと、病室が個室であることから、持ち込んでもお咎めはありませんでした。

もちろん、病院食の夕食もちゃんと食べましたよ!

眠れない夜

消灯時間が過ぎてからもしばらくはテレビを見ていましたが、少し眠くなってきましたので10時には明かりを消してベッドで横になりました。

しかし、ここから長い夜が始まりました。

寝返りをうつたびに、腰のあたりに痛みが走るようになったのです。

原因ははっきりしています。

どう考えても、手術の後遺症です。

別にこれは医療ミスというわけではありません。

麻酔が完全に切れたので、それまで感じていなかった痛みを感じるようになっただけです。

痛いのでなかなか寝付けません。

かといって、鎮痛剤を飲むほどかといわれますと、そうでもない。

実に難しいところでした。

座ったまま眠れるといいのですが、そんなことをしたら夜に見回りに来た看護師さんの腰が抜けてしまいます。

痛みをこらえて、ベッドで横になって眠りました。

手術前夜に早く寝すぎた時と同じように、夜中の3時に目を覚ましたり、寝たり起きたりを繰り返しながら眠りにつきました。

あと2日ほど、入院していかなくてはなりません。

病院でぐっすりと安眠できる日は、どうやらやってきそうにありません。

退院したら、自分の布団でゆっくりと眠りたいなと、思いました。

さて、これで手術という最も重要なことが終わりましたが、だからといってまだ退院はできません。

経過観察のため、あと2日は入院しないといけません。

経過が良ければ、4日目の午前中には退院できますが、どうなるのかは神のみぞ知る事です。

無事に退院できないと、貴重な有給をまたしても使うことになりかねません。

なんとか4日目に退院したいものです!!

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

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